(37)ゲームAIは良い教師なのだろうか
自分が将棋を始めたのは将棋ソフトの影響があります。2014年にプロ棋士チームが1-4で敗北した第三回電王戦をニコニコ生放送でリアルタイムで観た時、将棋の駒の動かし方しか知らなかったときにも関わらず将棋の世界に革命が起きたかのような衝撃を受けました。それから弱いコンピュータを相手に指し始めるところから人間相手にネット対戦を重ねて将棋にはまったという感じです。将棋を始めてもう五年も経ってしまっているということに書いてる本人が驚いています。
将棋を始めた頃は将棋ソフトを用いて序盤定跡や終盤の詰め方を勉強していました。ネット対戦で指した棋譜をソフトに読み込ませると形勢判断と候補手がすぐに表示されるため、序盤定跡や詰将棋の勉強をすぐに怠る自分には画期的なアイテムでした。また、候補手の中で気になった変化を入れるとすぐに答えが返ってくるため、序盤に潜む大きな落とし穴を知ることが出来たので順調に棋力を向上させることが出来ました。
しかし、ここ最近は将棋ソフトを利用した学習を意図的に減らすようにしています。というのも、劣勢時の局面における将棋ソフトの候補手に疑問を抱いたからです。劣勢の時には「相手が間違える前提で指して逆転を狙う」という前提のもとに指し手を考える必要があります。強いプロ棋士はこのような勝負手が上手い印象があります。将棋ソフトは「相手も自分と同じくらい手が読めている」前提で指し手を決めるので勝負的には平凡な手に収まることが多いと自分は捉えています。
前名人の佐藤天彦九段は将棋ソフトについて「正しく使えば有益、ともすれば自分の頭で考えなくなる」という評価をしていました。序盤定跡や優勢時の終盤の詰め方をソフトで勉強して、劣勢時の勝負手は対人の練習将棋で覚えるといった感じで使うのが最も実践的な強さが手に入ると現在は考えているので、定期的に対人戦の研究会で棋力を磨いています。AIを学習の為に使うにはその特性を理解して適切に使う必要があるでしょう、最も効率的なAIを使った学習方法を考えるAIが出現することを密かに願ってます。
2019/06/09