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(34)客観的公平性を重要視しない組織に未来はない

トレーディングカードゲームMagic the Gatheringのプロ大会にて重大な事件が起きました。プロプレイヤーである渡辺雄也選手がMTG公式からカードスリーブのマーキング疑惑により失格処分及び30ヶ月の出場停止処分を受けたようです。Cygamesの抗議声明のページには擁護意見の他、一連の裁定に関わる事実関係に関して時系列で記載されているので気になった方は読んでみてください。

さて、今回の件で自分が強く問題視しているのは裁定の公平性についてです。「一度ジャッジによってチェックを受けてOKが出たスリーブでプレイをしたら後から呼び出されてジャッジから失格処分を受けた」という状況には疑問を抱かざるを得ません。一度OKとされた裁定が運営の都合次第で変更が可能であるというような状況は到底フェアであるとは思えません、変更するので有れば当初そのように判断した理由とそれを覆した理由をセットで説明する責任があるはずです。また、スリーブの状況確認もプレイヤーの立会いがない密室で行われたという点も気になります。冤罪をかけることすら可能となるような裁定のやり方で競技を運営してeスポーツを名乗ろうとしているという公式の態度にとても腹が立ちます。選手の白黒以前にこのような競技の運営方法ではプレイヤーが安心してプレイに取り組むことが出来なくなっていくでしょう。

似たような問題は他のゲーム業界でも起こっています。三年前、三浦九段は渡辺明から濡れ衣を着せられ、数ヶ月間の出場停止処分を受けました。客観的な証拠がなく、処分の重さについても説明がなく一方的に、密室で判断を下す将棋連盟の不健全さを感じざるを得ません。第三者委員会の介入により事件は和解へと向かいましたが、一連の対応の不十分さは一部の将棋ファンに大きな不信感を植え付けました。

公平性を重要視しない組織には、ましてやルールを重要視する勝負の世界でこのようなことをやっているようでは全く未来がないと思います。プロが自分の能力を遺憾無く安心して発揮できる環境が整備されなければ質の高い勝負風景をファンに提供出来ないという問題以前に、ファンに対して勝負自体がいわゆる身内感を与えてしまうという点が問題だと捉えています。あらゆる利害がその勝負に絡んでいたとしても、盤上だけは公平性が担保されているという保障があらゆる競技のタイトル戦に付加価値を与えている筈です。新規プレイヤーを獲得したいという業界の共通目標を達成したいので有ればまずは運営の公平性について見直す必要があるでしょう。

2019/05/13