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(53)社会実装とリファクタリング

物質を計算するコードは色々あります。数十万円程度のライセンス料が必要で機能が充実しているVASPや、無料OSSで現在進行形で機能をどんどん追加しているQuantum EspressoやOpenMXなどなど、様々な選択肢があります。各コードにそれぞれ特徴はありますが、構造と原子種を入力したら電子状態やエネルギーが出力されるという感じで動きます。表向きは「誰でも中身をあまりわかってなくてもブラックボックスで使うことが出来る」コードです。表向きは。

しかし、これらコードはそれぞれ「フォーマットが違う」という地獄が待っています。それぞれの入力フォーマットをまず覚える&慣れるところからスタートで、エネルギーを求めた後に他の物理量を知りたい時もそれぞれのコード独自手順で実行ファイルを動かすという地獄が待ってます。そしてそれぞれのコード独自の出力フォーマットで結果が出力されます。大体この手順が煩わしいので実験の方々に気軽に使われてこなかったのかもしれません。いくつかの物理量は統一フォーマットで出力されるようになっているのですが。

より多くの人に気軽に使ってもらいたいのであれば統一されたフォーマットで入出力が扱える必要がありますが、その作業をする人がいないというのが現状です。コードのリファクタリングなどの「コード自体の開発を楽にする作業、利用しやすいように整備する作業」はサイエンス的に新規性がなく論文にならない為、誰もそれをやろうとはしません。私もしたくありません。今後、企業などで利用者が少しずつ増えていくことが予想されていますが、この部分が大きな障害になることでしょう。どうすれば良いのか全くわからないので出来る人に外注してもらうように働きかけるしかなさそうです。

2020/06/12