(58)研究の発展スピードが速すぎて辛い
大学院修了単位を揃える為に有機化学の研究室にインターンシップに行っています。自身の専門である電子状態計算が化学実験の人たちに役立てる可能性があることを知れたので中々有意義な時間を過ごしています。多分野の学生と色々とディスカッションする機会をもっと早く持てていれば違った進路があっただろうなと思うと後悔に似た感情が湧いてきます、論文執筆で忙しかったので現実的には厳しかったのですが。
インターン先では有機薄膜太陽電池の研究について勉強しているのですが、トレンドの移り変わりがとても早く戸惑っています。変換効率値を世界のグループがガンガン更新してくるので2-3年前に革命的な材料として提案された分子が一気にオワコン化するということがよくあるようです。化学分野は競争が激しいというのは巷でよく聞く話ですが固体物理の更新速度とは段違いだと感じます。自身の専門であるトポロジカル物質は十年で数百くらいの無機物質の提案がされている印象ですが、有機薄膜太陽電池は5年で数千もの分子が提案されているというレベルです。マンパワーで攻めるといった姿勢に資本主義を感じます。
一つの物質についてじっくり調べるといった研究はオワコンになっていくのでしょうか?電子状態計算の世界でも汎用性のある研究、たとえば対象を限定せずに幅広い物質に対して適用可能な計算方法だったり、たくさんの無機物質に対して計算で物質探索を行うといったような研究がトレンドになっている印象を受けます。自分がいるグループもそういう方面に向かって研究を進めているというような感じですが、次から次へと新しい手法が発表されるので正直勉強が追いついていないです。
ここ数年は機械学習を応用した研究がかなり盛んに行われており、ブレークスルーを起こしたかのようにトレンドに上がったりします。最近ではかの有名なDeep Mindがタンパク質構造予測でデータ科学的アプローチでハイスコアを出したことがニュースになりました。最先端の話題についていけるように勉強しなければいけないのが研究者の努めかもしれませんが、この速さで研究のトレンドがどんどん移り変わると何をじっくり勉強すれば良いのかわからなくなっていきます。何も考えず資本が集まる分野に行って懐にたくさん金が入るように動くのが最適行動でしょうか?資本主義万歳。
2020/12/12